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野菜・果物の健康維持機能に関する研究動向
 
 5.果物の機能性に関する研究動向

d. 骨の健康とカンキツ

みかん

近年、果物の摂取が健康な骨の形成・維持に重要なのではないかとする多くの疫学研究結果が報告されるようになってきました。果物にはビタミンCやマグネシウム、カリウムなどのミネラルが豊富に含まれるため、丈夫な骨の維持に重要と考えられていますが、それ以外にも近年ではカンキツ類に豊富なβ-クリプトキサンチン(β-CRP)やフラボノイドの骨代謝に及ぼす影響が明らかになっています。

カンキツ類にはヘスペリジンやナリンギンというフラボノイドが多く含まれていますが、これらのフラボノイドが骨代謝にプラスに影響するのではと考えられるようになったのはある一つの論文がきっかけでした。高脂血症治療剤として広く世界中で使われているスタチン系薬剤はコレステロールの生合成を抑制することで血中コレステロール値を低下させますが、マウスに投与すると骨量が増加するという論文が1999年に報告されました 1)。その後、多くの疫学研究が行われ、スタチン系薬剤を服用している人はそうでない人に比べて大腿骨頸部や腰骨などの骨折リスクが有意に低下するとの報告が数多く出されました 2), 3)。一方、カンキツフラボノイドであるヘスペリジンやナリンギンにもコレステロールの生合成阻害作用があり、ラットの血中および肝臓中の総コレステロール値を低下させる作用が報告されています 4-6)。このことからこれらのフラボノイドの骨代謝に対する作用について検討され、その結果、培養細胞レベルや骨粗鬆症モデル動物を用いた研究から、骨芽細胞を活性化させ骨量の減少を抑制することが明らかにされました 7-9)

一方、カンキツ類、特に日本のウンシュウミカンに特徴的に多く含まれているβ-CRPと骨代謝との関係は国内で多くの研究が行われています。Yamaguchiらは大腿骨を用いた培養実験で、β-CRPが骨代謝マーカーであるアルカリフォスファターゼの活性上昇作用や骨中のカルシウム含量を高める作用のあること、また破骨細胞の骨吸収を抑制することを報告しています 10), 11)。また、これらの効果は骨粗鬆症モデルを用いた動物実験レベルでも確認されたとしています 12)。興味深いことにβ-CRP以外のカロテノイドではこのような作用は認められませんでした。一方、β-CRPと骨密度との関係を疫学的に検討した結果がつい最近になって日本の研究グループから報告されました 13)。ミカン産地の住民を対象にした調査から、閉経女性では血中β-CRPレベルが高いグループでは骨密度低値のリスクが半分以下であったとする報告です。この研究では毎日平均で271gの果物を摂取しているグループでも同様にリスクの低下を認めています。栄養調査の結果から、調査対象集団が摂取している果物では最もミカンが多いことから、筆者らはβ-CRPの豊富なミカンの摂取が閉経女性における骨密度低下に対して予防効果が期待できるのではないかと述べています。

国内の主要果実であるウンシュウミカンには、健康な骨の形成・維持に不可欠なビタミンCやミネラル類が豊富であり、また近年、骨代謝に作用することが明らかになりつつあるヘスペリジンやβ-CRPが豊富に含まれるため、果物の中でも特に効果があるかもしれません。

(文責 杉浦 実)

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