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野菜・果物の健康維持機能に関する研究動向
 
 3.主な果物の生理機能

a.カンキツ類

カンキツ機能性成分に関して最近新しく報告されたカンキツ成分の体内動態に関する研究と、がん予防以外の機能について紹介します。

オレンジ

(1)キサントフィル類がヒトの脳内で検出された。

β-クリプトキサンチンの神経細胞活性化作用が培養細胞を使用した実験で認められている1)が、このカロテノイドが脳関門を通過出来るかどうかに関する知見はありませんでした。Craftらは抗酸化物質が脳内で機能を果たしているかを知るための一環として、ヒト(死体)の脳における抗酸化物質の定量を行いました2)。トコフェロール、レチノールなどとともにカロテノイドも検出されました。カロテノイドではβ-クリプトキサンチンなどのキサントフィル類の割合が高かったと報告しています。β-クリプトキサンチンの抗酸化などの機能が脳内でも発現している可能性が考えられます。また、ラットではβ-クリプトキサンチンが脳内へ移行する可能性が認められています3)

(2)β-クリプトキサンチンが骨髄で検出された。

β-クリプトキサンチンには培養細胞での骨代謝改善作用が明らかにされています4)。β-クリプトキサンチンが動物の骨髄に入るかは明らかにされていませんでしたが、西尾ら3)は骨随中に検出できることを示しました。ラットにβ-クリプトキサンチンを投与することで、骨中のカルシウムが高まるなどの結果5)も含め、このカロテノイドが骨密度の上昇、骨粗鬆症の予防に役立つ可能性が高まりました。

(3)フラボノイドの代謝

カンキツの重要なフラボノイドであるヘスペリジンは体内に入った後、配糖体からアグリコンであるヘスペレチンに変換されさらに抱合体となって体外に排出されるとされていました。松本らは、ヘスペレチンの一部がラット体内でホモエリオディクトールに変換されることを示しており6)、ヘスペレチンとは異なる機能が期待できると考えられます。ノビレチンに関しても、ラット投与後に脱メチル化がおこり、何種かの代謝物ができる事が示されており7)、代謝物は炎症反応の抑制作用がノビレチンより強いことが分かりました8)。ヘスペレチンとノビレチンは、PI3-K 経路でIgEによる好塩基球の刺激を抑制します。ウンシュウミカン(果皮も含む)を摂取は、春先のスギ花粉によるアレルギー鼻炎の軽減に関与しているかもしれません9)

(4)肥満

肥満は、がんや循環器疾患など多くの病気の危険因子となっています。適切な食生活と適切な運動で適正な体重を維持するのが理想ですが、抗肥満薬によるコントロールが必要な場合もあります。抗肥満のサプリメントが多く市販されています。マオウに含まれるエフェドリンもその一つですが、副作用が問題となり使用が禁止されました。体重減少の理屈としては、交感神経のβ-3に対する作動薬となり、熱産生が高まり、また食欲を減少させることで体重減少につながるという理屈が受け入れられています。マオウに代わるものが、ダイダイの果皮抽出物です。カンキツ類にはシネフリンとその関連物質が含まれており、熱産生作用があると思われることから、マオウの代替となるのではないかと考えられ、米国では多くの製品が販売されています。ダイダイの果皮抽出物は抗肥満効果が期待できるかどうかについて、また安全性に関して、より多人数による厳密な臨床試験が必要と考えられます10)

(5)アルツハイマー病

アルツハイマー病は、脳実質にアミロイドβ-ペプチド(Aβ)が蓄積(老人斑)することがきっかけとなり、さらにタウタンパク質が神経細胞に蓄積(神経原線維変化)し、神経が機能不全をおこし細胞死にいたるために認知能力が低下したり、精神症状が現れたりすると考えられています。アルツハイマーモデルラットにおいて、ノビレチンはAβが惹起する学習障害を予防する効果があります11)。また学習障害の改善とともにコリン作動性神経細胞を変性から救う作用があることが見いだされました12)

(文責 矢野昌充)

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