野菜・果物の健康維持機能に関する研究動向
3. 主な果物の生理機能
b. リンゴ
リンゴは不思議な果物です。栄養成分が記載されている日本食品標準成分表を見ても他の食品と比べて、特徴的な成分は見あたりません。にもかかわらず、数多くの疫学調査、ヒト介入研究などで、生活習慣病予防に効果があると報告されています。
フィンランドで25年間、疫学調査が行われ、リンゴ摂取は、肺がんに対する予防効果がきわめて高いことが分かりました1)。リンゴを多く食べている人は、食べていない人に比べて、リスクが58%も減少しました。また、リンゴの摂取は、肺がんを含むすべてのがんに対しても17%リスク下げると報告されています。さらに、約1万人の男女を調べた疫学調査から、リンゴの摂取は、脳卒中になるリスクを、男性で41%、女性で39%下げると報告されています2)。
心臓病や脳卒中に対するリンゴの効果も、明らかになってきています。フィンランドで1967年から28年間、約1万人の男女を調べた疫学調査(コホート研究)から、リンゴの摂取は、脳卒中になるリスクを、男性で41%、女性で39%下げると報告されています3)。
イギリスでは、子供に気管支ぜん息やアトピー性疾患の患者が増加しています。男性5,582人、女性5,770人を対象に、気管支ぜん息の症状発症と食品の摂取量との関係について疫学調査が行われました4)。その結果、生鮮果実を多く摂取していると、気管支ぜん息の症状が軽減されることが分かりました。この報告を受け、どの食品が気管支ぜん息の予防に役立つかについて、イギリスで気管支ぜん息の患者1,471人と健康な人2,000人を対象に疫学調査が行われました。その結果、リンゴの摂取量が多いと、気管支ぜん息になるリスクが減ると報告されています。とくに、1週間に2回以上リンゴを摂取していると、気管支ぜん息に罹患するリスクが32%減りました5)。
オランダ・ズフェン地域の住民に対する研究において、気管支炎、肺気腫等の慢性非特異的肺疾患と食生活について25年間(1960〜1985年)にわたって調査した結果、リンゴの摂取(相対危険度0.63)は、これらの発病を抑制する働きが認められました6)。
その他、興味深い研究として、英国で行われた2,512人を対象にした5年間の追跡によるコホート研究で、肺機能(1秒間での強制呼気量)と食品摂取との関係を調査した結果、リンゴを1週間に5個以上食べている人の肺機能が高いことが分かりました7)。
最近、ブラジルで行われた肥満の女性に対する研究からリンゴを摂取すると体重が減ることが分かりました8)。BMIが25以上の女性(30〜50歳)に対して1日3個のリンゴを4ヶ月食べてもらったところ、体重が1.22kg減ったと報告されました。減少量が少ないと感じられるかも知れませんが、カロリーを同じにしたオートムギのクッキーを食べた人より統計的に有意に減少しました。そのため、著者らは、リンゴの摂取は、体重の減少に寄与すると結論づけています。
リンゴはポリフェノールを多く含み、抗酸化活性が高い果物です9)。リンゴでは抗酸化成分としてカテキン、エピカテキンやケルセチン配糖体、プロシアニジンなどのポリフェノール10-14)が見出されています。リンゴの抗酸化活性をビタミンC換算すると、リンゴ100gにはビタミンC1500mg分に相当する抗酸化活性があることになります15)。リンゴ100gに含まれるビタミンCは4mg16)ですから、リンゴの抗酸化活性のほとんどはポリフェノールに由来します。
ラットにリンゴペクチンとポリフェノール高含有リンゴ乾燥物を投与した実験では、これらを単独で投与するよりもペクチンとポリフェノールの両方を同時に投与した方が、血中および肝臓におけるコレステロールと中性脂肪の低下作用が大きかったという結果が出ています17)。この結果はリンゴに由来する成分をサプリメントで摂取するよりも、食品として多くの成分を含んだ状態で摂取することが有益であることを支持するものです。
