がんにならない為にぜひ野菜摂取を。
<垣添 忠生氏
国立がんセンター中央病院院長、医学博士、膀胱がん治療の他、発がん抑制の研究に従事、専門分野は泌尿器科学、悪性腫瘍学>
3人に1人ががんで亡くなっています。
がんは、‘81年から死亡原因の1位になり、どんどん増えて(表2)今では年間約30万人、3人に1人ががんで死亡しています。
表2
主要死因別にみた死亡率の年次推移(抜粋)

資料:厚生労働省「人口動態統計」より
人間の体は60兆個の細胞からできていて、その1つの細胞の中には核があり、その核にはDNAがあって、その上に約3〜4万個の遺伝子が乗っている。その中にがん遺伝子とがん抑制遺伝子が約300個くらいあると考えられています。がんになるのは、がん遺伝子が活性化するか、がん抑制遺伝子が不活化するか、あるいはこの組み合わせで正常な細胞ががん細胞ががん細胞になるためと考えられています。
数十年前は胃がんや子宮がんが多かったのですが、今は肺がん、大腸がん、乳がんなどが増えてきています。なぜがんのパターンが変わったのかといいますと、それは生活習慣が変わったからです。
がんの原因としては、だいたい喫煙が30%、食事が35%、ウイルスなどの感染が10%くらい関係していると考えられてます。食事では塩辛いものとか、うんと脂っこいものが良くないわけです。焼けこげは避ける、食べ過ぎない、というのも大切です。そういうわけで合計75%、つまり原因の3/4は、私達の日常生活に深く関係するものと考えられます。
がん発生のメカニズムを簡単に説明しますと、タバコの煙や食物の中の微量な発がん物質などで、正常な細胞のDNAに傷がつく。その細胞がふえてくる途中で2番目の傷がつくという形でだんだん増える。正常な細胞ががん細胞に変わるのはおそらく遺伝子の傷が6つとか8つとか、場合によっては10個ぐらい積み重なってと考えられます。がんは、長く時間がかかって発生する慢性の病気なのです。
長期にわたる誤った食生活の先にがんが。
1本のタバコを吸っていると、煙の中にはきわめて微量ですが、20種以上の発がん物質が混ざっています。1日20本、それを20年、30年続けた先で肺がんにつながると言うのはなかなか想像しにくいですね。でも、このタバコはおいしいなとか、誤った食事をおいしいな、と続けると何十年も先に、さまざまな生活習慣病が控えているということを、ぜひイメージしていただきたい。
野菜の機能を調べますと、「生活習慣とがん」に関する調査(表1)では、いろいろながんに対して野菜が危険性を下げるという結果が出ています。
表1

資料:「世界がん研究基金・アメリカがん研究財団報告書」より
「野菜・果物摂取による肺発がん危険度の低下」と言う研究では、生野菜や果物をとるほどがんが減るという関係があります。ただしβカロテンを30ミリグラムとか薬として大量にとると肺がんのリスクが逆に上がってしまったという調査報告があります。食物としてとるのはいいけれど、薬で大量にとるのは危険度が高まることが知られてきました。
野菜の食物繊維のセルロース、ペクチンなどは、いろいろな野菜類や豆類などに含まれており、これもがん予防成分として非常に大事です。
「発酵豆乳によるラット乳発がんの抑制」と言う研究では、豆類が発がん抑制に有効という結果が、また「ネギ属野菜の消費とがん予防の疫学研究」では、胃がんや大腸がんに対する予防効果が出ています。
野菜の摂取不足が、がん増加の一要因かも。
野菜の摂取量は、アメリカでは‘85年から増加しており、逆に日本では減少しています(表3)。
表3
野菜一人当たり消費量[kg/年]

資料:農林水産省「食料需給表」、FAO "Food Balance Sheet"より
もしかするとこれが、日本ではがんが増え続け、アメリカでは減り始めていることの1つの原因かもしれず、野菜摂取は非常に重要です。 |