a.2007年の研究動向の特徴と注目論文
このホームページに載せている初期の疫学研究の論文の多くは、ほとんどアメリカで行われた研究でした。その後、ヨーロッパからも研究報告が出るようになってきました。2003年頃からは、徐々にその他の国からの研究も発表されるようになってきました。その中には日本で行われた研究も数は多くはありませんが、発表されるようになってきました。2007年にも特徴ある論文が多数発表されていますので、その中からいくつかを紹介いたします。
1)世界がん研究基金報告書にみる野菜のがん予防効果
2007年に発表された論文でもっとも重要なものは、世界がん研究基金による「Food, Nutrition, Physical Activity, and the Prevention of Cancer: a global perspective」です。この報告書は1997年にすでに発表されていましたが、その内容を一新したものです。前報告では4,500のがんと食生活に関する疫学研究がまとめられ、とくに野菜や果物ががん予防ではきわめて重要であることが示されました。今回の報告書では、7000の論文がまとめられましたが、野菜あるいは野菜関連では含有成分の特徴に基づいて、1.非でんぷん野菜、2.ねぎ類、3.にんにく、4.葉酸を含む食品、5.リコペンを含む食品、6.セレニウムを含む食品に分けられました。その結果、個々にはがん予防効果の確実性はやや低くランクされています。果物は種類に分けずに総量とされ、がん予防効果の確実性は高くなっています。
がん予防のためには、野菜・果物の摂取量は
- 公衆栄養政策としては、1日600gを目標とする
- 個人の食生活では、1日400gを目標とする
ことが提案されています。
今回の報告書では、前回には取り上げられなかった、肥満や身体活動の低下ががん発症のリスクとなることを強調しています。これらの結果に基づいて、「がん予防のための10ヶ条」も発表されました。その内容は以下のとおりです。
「がん予防のための10ヶ条」
- 体脂肪:体重不足にならない範囲でできるだけ体重を少なめに維持する
- 身体活動:毎日の生活の中で身体活動を行う
- 体重増加をもたらす食品と飲料:エネルギー密度の高い食品を少なく、砂糖入り飲料を避ける
- 植物性食品:植物性食品を多く摂取する
- 動物性食品:赤身肉の摂取を減らし、加工肉製品は避ける
- アルコール飲料:アルコール飲料は減らす
- 保存・加工・調理:食塩の摂取を減らす、カビの生えた穀類や豆類は避ける
- サプリメント:必要栄養素は食事のみから摂取する
- 授乳:母親にとっても、赤ちゃんにとっても重要
- がん生還者:がん予防のための勧告に従う
2)メタボリックシンドーム・肥満と野菜摂取に関する論文
昨年の論文では、肥満やメタボリックシンドロームに関連した疫学研究が発表されました。わが国では2005年に、メタボリックシンドロームの診断基準が発表され、社会的にも大きな関心を呼び、厚生労働省も国民健康・栄養調査に新たな調査項目としても取り入れています。米国やWHOでも診断基準を出しており、今後益々世界的な注目を集めそうです。2006年にも関連論文が発表されていましたが、まだそれほど多くの論文ではありませんでした。野菜や果物の多い食事パターンはメタボリックシンドロームのリスクが低くなることを示していました。
2007年には野菜摂取と健康の関連について調査したところ、もっとも多くの論文があったのは、メタボリックシンドロームや肥満との関係をみた研究でした。メタボリックシンドロームへの関心はわが国だけではないことを改めて認識しました。1)にも示しましたように、がんの発症についても、体重抑制ががん発症予防にも重要であることが示されています。
2007年の研究では、成人の肥満だけではなく、子どもの肥満についても生活要因を含めて研究されています。成人では野菜や果物の多い食事パターンではメタボリックシンドロームの各種指標が低いことが示されています。とくに体重やメタボリックシンドロームに対しては、いわゆる地中海食のような食事パターンが有効であることも示されています。また、ベジタリアンは非ベジタリアンに比較すると、体重が低くなることが過去の論文からもまとめられています。
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