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疫学研究でみる野菜・果物摂取と健康の関係
 
 2.果物摂取と健康の関係

c. 動脈硬化

動脈硬化にはいくつかの種類がありますが、最も多いのがアテローム動脈硬化です。動脈は、外膜、中膜、内膜の3重構造をしています。血液と接する内膜には血管内皮細胞が張り付いています。血管内皮細胞は重要な機能を持っており、一酸化窒素やプロスタサイクリンなどの物質を出して、血圧調節、血栓予防、抗炎症、抗酸化など血管を正常に保ちます。血管内皮細胞が傷害を受けることで、動脈硬化が始まります。傷害を起こす要因として、高血圧と関連するアンジオテンシンおよび酸化ストレス、高脂血症と関連する酸化LDL-コレステロール、脂肪細胞から分泌されるサイトカイン、糖尿病と関連する糖化タンパクと酸化ストレス、喫煙による酸化ストレスなどがあります。このような血管内皮細胞の傷害要因により、生体防御に関係する白血球の単球が血管内皮と内膜に間に入り込みます。単球はマクロファージに変化し、酸化LDL-コレステロールや他の脂肪性物質を取り込み、次第に大きな塊(アテローム)となります。これが血管内を狭くしたり、破裂によって血栓を形成したりすることで、血液循環の障害につながり、脳卒中や心臓病を起こします。これらの疾病は、死亡原因の2、3位であり、予防が重要です。すなわち、危険因子である動脈硬化を予防することが重要です。

ブドウ

動脈硬化の発症や進行は、LDLの酸化から始まります。果物や野菜に含まれるカロテノイドやポリフェノールなどは、その抗酸化作用により活性酸素を除去するため、LDLの酸化を防ぎ、動脈硬化の予防に効果があると考えられています。LDL酸化予防の可能性についてはいくつかの報告があります。例えばアメリカミネソタ州で行われた調査では、血清中β-クリプトキサンチンとルテイン・ゼアキサンチン濃度のレベルが高い人ではLDLの酸化が遅く、また動脈硬化の程度が低いと報告されています1)。オレンジ他6種類の果物の果汁を飲用すると、直後に血液の抗酸化活性が高まり、90分程度持続するという報告があります2)。また、冠状動脈性心疾患の患者に2週間ブドウジュースを飲用してもらったところ、飲用前より血液中のLDLの酸化が遅延されることが示されています3)

ブドウの皮や赤ワインなどに見出されるポリフェノールの一種であるレスベラトロールは、LDLの酸化を強く抑制するとされています4)。脂質の代謝に関してもいくつかの研究結果があります。

グレープフルーツなどの苦味成分として知られるナリンジンには、血液中のコレステロール濃度を減少させる効果が認められています5)。ミカン産地の三ヶ日町で行った疫学研究の結果ウンシュウミカンの摂取はミカンシーズンだけではなく年間を通じて脂質代謝に良い影響をおよぼすのではないかと指摘しています6)。冠状動脈疾患の患者においてグレープフルーツのスイーティを加えた食事を取ると、脂質代謝が改善されることが報告されています7)

抗酸化成分の摂取と疾病のリスクに関しては、多くの疫学研究が行われているのですが8),9)、残念ながらカロテノイドの摂取と予防効果に関しては必ずしも肯定的な結果だけではなく、β-カロテンの投与による介入試験では冠動脈疾患の予防効果を示す結果は得られず、逆に喫煙者ではリスクを上げたとする報告もあります。また、ポリフェノールの場合も、予防効果に関して相反する結果が得られています。日本で行われたカロテノイド摂取と動脈硬化の指標である脈波速度に関する疫学研究によれば、β-カロテンとβ-クリプトキサンチンには予防的な結果を見いだせたが、それら以外のカロテノイドでは認められませんでした10)。カロテノイドの種類に、また対象とする疾病や症状により異なる結論が出るのかもしれません。

脳梗塞や心筋梗塞に対して、果物が予防的に働くことは、多くの疫学研究で示されています11-17)。日本での疫学研究でも予防効果が示されています18)。しかも、たくさん食べる程リスクが下がることも示されています。このように、果物・野菜の摂取、特に果物の摂取と予防との関係が示されていますが、なぜ予防的に作用するかは明確ではありません。果物の摂取が、動脈硬化、高血圧症などいくつかの危険因子に対して複合的に働くことで、脳梗塞や心筋梗塞予防につながるのかもしれません。

脳梗塞や心筋梗塞の予防に関して、「5-A-Day運動」、「毎日果物200g運動」の科学的な裏付けがより強固になったと見てよいでしょう。

(文責 小川 一紀)

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