d. 高血圧症
アメリカでは、約5000万人、成人の4人に1人が高血圧と考えられています。そこで、アメリカ保健社会福祉省、アメリカ国立健康協会、アメリカ国立心臓・肺・血液協会は合同して、最高血圧(収縮期血圧)が120mmHg以上で最低血圧(拡張期血圧)が80mmHg以上の人に対する食事摂取の指針を提案しています。
その指針の名称は、DietaryApproachestoStopHypertensioneatingplan、略してDASH食事摂取プランです。DASH摂取プランに従って、栄養バランスの良い食事をしながら食塩(ナトリウム)の摂取量を減らすと、血圧が下がることが分かりました。減塩だけでも血圧を下げられますが、減塩効果が組み込まれたDASH食事摂取プランでは高血圧予防に大きな効果をもたらします。
DASH摂取プランは、果物、野菜、低脂肪食品をたくさん摂取して、飽和脂肪、コレステロール、総脂肪を減らすことに主眼がおかれています。また、全粒穀類、魚、鳥肉、種実の摂取も必要としています。一方、赤身の肉、菓子、砂糖を含む飲料については減らすことを推奨しています。こうした食事内容にすれば、食塩を減らし、蛋白質、食物繊維とともにマグネシウム、カリウム、カルシウムが豊富に摂取できます。
下記にDASH食事摂取プランにおける1日の摂取カロリーを2000kcalとした場合の食品群ごとの摂取カロリーを示しました。
表 DASH食事摂取プランによる食品群ごとの摂取指針
| 食品群 |
1日の摂取量を2000kcalとした場合の各群の摂取カロリー |
| 穀類&穀類製品 |
560-640kcal |
| 果物 |
320-400kcal |
| 野菜 |
320-400kcal |
| 低脂肪/無脂肪の乳製品 |
160-240kcal |
| 脂肪、オイル |
160-240kcal |
| 肉、トリ、魚 |
160kcal以下 |
| 種実、種子、豆類 |
46-57kcal |
| 菓子 |
57kcal |
表からも分かるようにDASH食事摂取プランでは、果物の摂取量は320-400kcalなので、ミカンで考えると1日8〜10個、中くらいのリンゴでは、4個くらいとなります。
血圧が、正常値より高くなればなるほど、健康上のリスクは増加します。また、血圧が120/80mmHg未満(最高血圧/最低血圧:収縮期血圧/拡張期血圧)と正常であっても、年齢が上がるにつれ血圧が上昇する場合があることも分かってきました。そのため、過去に、多くの研究者たちは、血圧上昇についての手がかりを得る目的で、単一の栄養素について検討を行いました。カルシウムやマグネシウムなど、あらゆる栄養補助食品を用いて血圧を下げる試みがなされましたが、残念ながら決定的な発見はありませんでした。そこで、アメリカ国立心臓・肺臓・血液研究所(NHLBI)によってサポートされた科学者たちは、「DASH」プロジェクトと呼ばれる研究を開始しました。この研究は、摂取食品の中に含まれている栄養素のうち、何が血圧に影響するのかについて総合的に検討することを目的としていました。試験の結果、飽和脂肪、コレステロール、総脂肪が低く、果実、野菜、低脂肪乳製品をたくさん食べている人の血圧は低いことを見いだしました。
DASHプロジェクトの研究は、最大血圧が160mmHg以下で、最小血圧が80〜95mmHgの459人の成人について行われました 。参加したボランティアのうち約27%は高血圧患者でした。ただし、この試験には、ベジタリアンや高血圧などの治療食を食べている人は参加していません。この研究では、3つの食事摂取プランを比較しました。 [1] 多くのアメリカ人が食べている典型的な食事と同じ摂取プラン、 [2] アメリカ人が食べている食事と同じであるが、果実と野菜の摂取を加えた摂取プラン、 [3] 果物と野菜を多く摂取して全体の栄養バランスを考慮したDASH摂取プランの3つです。3つのすべての摂取プランとも、約3,000mg/日のナトリウムを含んでいました。
結果は、 [2] 果実と野菜摂取プランのグループと [3] DASH食事摂取プランのグループの人の血圧が劇的に下がりました。しかも、果物と野菜を多く摂取し、コレステロールなどの摂取を減らすDASH食事摂取プランは、血圧を下げるのに特に効果が認められました。DASH食事摂取プランに従って食事をしていた人の血圧の減少速度は速く、試験開始後、2週間以内に血圧が下がりました。この結果は、果物・野菜を多く摂取するとともに全体の栄養バランスを考慮する必要があることを示しています。
DASH食事摂取プランは、血圧の高い人たちに対して有効なだけでなく、現在は血圧が高くない人たちに対しても心臓など循環器系を健全に保つために有益です。ただし、すでに高血圧症と診断され、薬物療法を受けている人は、医師の指示に従ってください。
高血圧予防のためにアメリカで推奨されているDASH食事摂取プランでは、果物、野菜の摂取を増やすこととともに、食塩の摂取量を減らすことを目標としています。「DASH-Na」と呼ばれる研究では、ナトリウム(食塩)の摂取量と血圧との関係が調べられました 。この「DASH-Na」の研究には412人が参加し、摂取するナトリウムのレベルを3つに分け1ヶ月間、調査が行われました。ナトリウムレベルは以下の通りです。1日当たりのナトリウムの摂取量が[1] 約3,300mg(食塩として約8g、多くのアメリカ人によって消費されたレベル:注)日本人の食塩摂取量は約10g)、 [2] 約2,400mg(食塩として約6g)、 [3] 約1,500mg(食塩として約4g)のグループに分けました。参加者の最大血圧は120-159mmHgで、最小血圧は80-95mmHgでした。
結果は、ナトリウム(食塩)の摂取量を減らすと血圧が下がりました。最も大きく血圧が減少したのは1日当たりのナトリウムの摂取量が1,500mgのグループで、高血圧症の人の血圧が大幅に減少しました。また、それ以外の人でも大きく減少しました。
「DASH-Na」の研究は、ナトリウムを減らすことが重要であることを示しています。そのため、果実と野菜(他の多くの食品よりナトリウムが低い)が多いので自然に、食塩の摂取量を減らせます。 DASH食事摂取プランは、1日2000kcal摂取することを前提として、ナトリウム(食塩)を減らせるように作成されていますが、1600kcal/日などのメニューも提示されています。
DASH食事摂取プランでは、果物、野菜、全穀粒食品を多く摂取するようになっているため、慣れるのに時間がかかるかも知れません。特に、この摂取プランでは、食物繊維の摂取量が多いので、食習慣を急激に変更すると下痢になる可能性があります。この問題を避けるためには、果物、野菜、全穀粒食品の摂取量を徐々に増加させるようにして下さい。 |