j. 眼病
加齢とともに特に中年から発生率が高くなる眼の病気に白内障や黄斑変性症があります。これらの病気は、視力の減退をおこし失明にもつながります。
白内障は、水晶体という眼のレンズに含まれているタンパク質の透明度が下がり濁った状態をいい、活性酸素による水晶体の酸化が原因と考えられています。黄斑変性症は、視力に取って重要な網膜の中心にある黄斑という部分が萎縮、裏側に新生血管が発生する疾病です。ものがぼやけ,細かい部分が見えにくくなり,視力が低下します。
体内のビタミンCやカロテノイドなどの抗酸化成分を減少させる喫煙は、白内障発症の大きなリスクとなります。一方、カロテノイド、ビタミンC、ビタミンEなどの抗酸化成分を豊富に含む果物を食べることが予防に有効ではないかと考えられます。例えば、アメリカでの、女性看護師約5万人を対象としたいくつかの疫学研究があります。食品からのカロテノイドあるいはビタミンC摂取量が多い人、サプリメントでビタミンCを長期摂取している人はそうでない人に比べて、白内障の発症リスクが低いことが分かりました。また、男性医療専門職を対象とした研究では、カロテノイド(ルテイン,ゼアキサンチン)の摂取が白内障のリスクを下げることが示されています。
また、カナダで行われた疫学調査では、白内障に罹患したグループは、罹患していないグループと比べて、ビタミンCとビタミンEの摂取量が少ないと報告されました。ビタミンサプリメント摂取者では、どの成分が有効かは不明であるが、白内障のリスクが下がったという疫学調査もあります。ルテインをサプリメントとして2年間摂取した臨床試験では、白内障の視力低下を改善する効果がみられたとしています。この試験ではα-トコフェロールも調べていますが、効果がみられなかったようです。
一方で、効果が見られなかったとする疫学研究の結果もいくつか報告されています。例えば、β-カロテンサプリメントの加齢に伴う白内障の予防に関して、米国で12年間行われた調査では効果は認められなかった、男性喫煙者の白内障発症のリスクは、α-トコフェロールとβ-カロテンを摂取しても下がらないとしたフィンランドでの報告などです。私たちが摂取し、血中から検出される主要なカロテノイドは6種類あります。予防には特定のカロテノイドのみを摂取するより、カロテノイドを区別しないほうが良さそうです。このようなことから、ビタミンC、カロテノイド、ポリフェノールなど多様な抗酸化物質を含む果物は白内障の予防に有効ではないかと考えられます。果物の摂取と白内障の関係を調べた疫学調査はこのことを支持しています。イタリアで行われた疫学調査では、果物の摂取が白内障の予防に有効であると報告されています。アメリカでも果物や全粒粉を多く摂取する人では同様に罹患率が低いという調査結果が得られています。また、アメリカ女性35,724人を対象とした10年間の追跡研究では2,067人の白内障が確認され、1,315人が白内障の摘出手術を受けていますが、果物や野菜を多く摂取する人では、白内障になるリスクが10〜15%減少すると報告されています。
米国で行われた疫学調査によると、カロテノイドを日常的に摂取しているグループは、ほとんど摂取していないグループに比べて、黄斑変性症の発症リスクが43%低いと報告されています。リトアニアでは冬季には野菜の摂取量が極めて少なくなります。このことが黄斑変性症の増加につながるのではないかという疫学研究例があり、年間を通して果物・野菜の摂取が重要と言えるでしょう。また、一日に果物を3サービング(ミカンなら3個位)以上食べる人は、1.5サービング以下の人に較べ、黄斑変性症になるリスクが低いという米国での疫学調査の結果が出ています。この調査では、黄斑変性症と野菜、抗酸化ビタミン、カロテノイドには強い関係は認められていません。インドで行われた無作為臨床試験では、ビタミンC、ビタミンE、β-カロテンといった抗酸化ビタミンには白内障の進行に関与しないことが示されています。また、ヘルスクレームとしてルテインやゼアキサンチンの効果については、信頼の置けるデータがないとしています。
以上のように、食品成分と食生活による眼病の予防に関して、結論は一定していません。多くの疫学研究がなされていますが、2005年までの研究を取りまとめた結論では、黄斑変性症には、ビタミンC、ビタミンE、β-カロテン、亜鉛を組み合わせたサプリメントの摂取がすすめられる、また、観察研究の結果から、抗酸化成分(特にルテインやゼアキサンチン)を含み、n-3脂肪酸を豊富に含む健康的な食生活が有益であろうとしています。一方、白内障については、サプリメントは効果がなく、健康的な食生活による予防については、可能性があるとしています。
眼病の予防には、サプリメントに頼るよりも、眼病以外への疾病の予防効果を考え、いろいろな成分を含む果物や野菜を食べる方が望ましいと考えてよいでしょう。
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